エンディングノートの書き方
最初のページから順に埋める必要も、全部を書き切る必要もありません。書けるところから書き、決められない項目は空欄のまま置いておけます。
エンディングノートとは何か(そして何ではないか)
エンディングノートは、ご自身の希望や、家族が必要とする情報をまとめておくための覚え書きです。決まった書式はなく、市販のノートでも、大学ノートでも、デジタルでも構いません。
一方で、エンディングノートには法的な効力がありません。「この預金は長女に」と書いても、それだけで相続の内容が決まるわけではありません。ここを最初に理解しておくと、何をノートに書き、何を別の手段で残すべきかの判断がつきます。
効力がないから無意味、ということではありません。残された家族がいちばん困るのは、財産の分け方より「連絡先が分からない」「契約がどこにあるか分からない」「本人がどうしたかったのか分からない」という点です。そこを埋めるのがエンディングノートの役割です。
最初に書くと効果が大きい5項目
最初のページから順に埋めようとすると、たいてい「生い立ち」で止まります。家族の負担が実際に減る順に書くと、途中で止まっても意味が残ります。
- 連絡してほしい人:氏名・続柄・連絡先。家族が把握していない友人・元同僚は、ここに書いておかないと連絡が届きません。
- 契約しているものの一覧:金融機関、保険、携帯電話、公共料金、定額サービス。金額や口座番号ではなく、「どこと契約しているか」だけで十分です。
- 医療・介護の希望:判断できなくなったときに、誰に決めてほしいか。
- 葬儀・お墓の希望:形式、規模、宗教・宗派、呼んでほしい人。
- 大切な書類のありか:保険証券、権利証、遺言書を作っている場合はその保管場所。
パスワードそのものは書かないでください。
ノートは、金庫に入れていても、亡くなったあとに複数の人の目に触れます。銀行やスマートフォンのパスワード・暗証番号をそのまま書くと、紛失や盗難の際にそのまま使われてしまいます。書くのは「どのサービスを使っているか」までにとどめ、開くための情報は別に管理してください。
書けない項目は空欄のままでよい
延命治療や葬儀の形式など、すぐに決められない項目があるのは自然なことです。空欄のままにしておいて構いません。むしろ、迷った末に「とりあえず」で埋めた記述のほうが、後で家族を迷わせます。
決めきれない項目については、結論の代わりに「誰に判断してほしいか」を書いておく方法があります。「延命治療については、長男と主治医で相談して決めてほしい」と書いてあるだけで、家族が背負う責任はずいぶん軽くなります。
書きっぱなしにしないための更新のしかた
エンディングノートで実際に起きる問題は、書かないことよりも、書いた内容が古くなることです。連絡先が変わり、解約したサービスが残り、気持ちが変わります。
- 各ページに記入日を入れる。いつ時点の情報かが分かるだけで、家族は「これは古いかもしれない」と判断できます。
- 見直す時期を決めておく。誕生日、年末、保険の更新時など、すでにある予定に紐づけると続きます。
- 消さずに書き足す。気持ちが変わった経過そのものが、家族には手がかりになります。
どこに置き、誰に伝えておくか
金庫の奥にしまい込んだノートは、必要なときに見つかりません。逆に、誰でも読める場所に置くと、書ける内容が限られてしまいます。次の2点を分けて考えてください。
- 置き場所:家族が探せる場所。仏壇の引き出し、書棚の決まった段など、具体的に。
- 存在を伝える相手:少なくとも1人には「あそこにある」と伝えておきます。中身まで見せる必要はありません。
なお、遺言書を作っている場合は、その保管場所もノートに書いておいてください。法務局に預ける自筆証書遺言書保管制度を利用している場合は、その旨を書いておくと、家族が制度を使って探せます。
遺言書との違い(法的効力があるのはどちらか)
遺言は、民法が定める方式に従って作らなければ効力を生じません(民法第960条)。自筆証書遺言の場合は、遺言者が全文・日付・氏名を自書して押印することが必要とされています(同法第968条第1項。財産目録については別の定めがあります)。
エンディングノートはこの方式を満たさないため、書かれている内容が遺言として扱われることはありません。次のように使い分けます。
- 財産を誰にどう渡すかを確実に実現したい → 遺言書(自筆証書遺言、公正証書遺言など)
- 連絡先・契約・希望・気持ちを伝えたい → エンディングノート
自筆証書遺言は、法務局で保管してもらえる制度があります(自筆証書遺言書保管制度)。制度の内容・手数料・手続きは法務省のページでご確認ください。
医療の希望を書くときに知っておきたいこと
医療・終末期の希望は、一度書いて終わりにするより、家族や医療・ケアチームと繰り返し話し合っておくことが大切とされています。厚生労働省は、こうした話し合いの取り組みを「人生会議(ACP)」として紹介しています。
ノートに書いた希望は、話し合いの出発点として役立ちます。一方で、実際の場面では病状によって選択肢が変わるため、書いた内容がそのまま実行されるとは限りません。「この通りにしてほしい」よりも、「何を大事にしたいか」を書いておくほうが、家族と医療者の判断を助けます。
制度・費用の面(高額療養費、成年後見と医療同意の限界など)は、医療・終末期のガイドで整理しています。
書き終えたら、家族に伝わる形にする
葬儀の希望については、ノートに書くだけでなく、形式・規模・予算をひとまとまりの文書にしておくと、実際にご葬儀を手配する家族が使いやすくなります。終活宣言では、いくつかの質問にお答えいただくだけで、ご自身の希望を文書として作成・保存できます。
費用の目安から先に知りたい場合は費用相場のガイドを、亡くなったあとに家族が行う手続きの順序を確認したい場合は手続き・法的情報のガイドをご覧ください。
※このガイドは制度・費用・手続きに関する一般的な情報のご案内であり、個別の法律相談・医療判断・契約可否を判断するものではありません。最終的なご判断は、専門家・関係機関に直接ご確認ください。掲載情報は出典記載の確認時点のものです。
本ページは、国が公開している資料にもとづく一般的な情報のご案内です。法的助言ではありません。エンディングノートには法的な効力がなく、財産の承継や身分に関する事項をご希望どおりに実現するには、法律の定める方式による遺言書などが必要になる場合があります。個別のご事情については、弁護士・司法書士・公証役場などにご確認ください。
この記事の出典
- 法務省「自筆証書遺言書保管制度」www.moj.go.jp
- 厚生労働省「人生会議(ACP)」www.mhlw.go.jp
- 民法(明治29年法律第89号)/e-Gov法令検索(第960条・第968条)laws.e-gov.go.jp